障がい者雇用事例/おおつかがゆく!

あたりまえですが「戦力として」採用しています

TOHOシネマズ株式会社 TOHOシネマズ西新井
副支配人 若林 亮太さん
人事労政部 人材開発室 マネージャー 塩崎 雅大さん

全国にシネマコンプレックスを展開するTOHOシネマズでは、その劇場のほとんどで障害者が働いています。障害者雇用率は3.96%(平成24年6月現在)。法定雇用率の2倍以上じゃないですか!でもこの事実、実は意外と知られていない。こんな素敵な会社もっともっと有名になっていただきたい!との一念でお伺いしました。


おたずねしたのは、西新井駅西口から徒歩5分、ショッピングセンターのアリオ西新井の4階にあるTOHOシネマズ西新井。10スクリーン約1,900席を擁するシネマコンプレックスです。


TOHOシネマズ西新井で働いている大野真広さんです。(写真㊨)特別支援学校在籍中に3回の実習を経て入社。勤続1年半になります。
副支配人の若林亮太さんです。(写真左㊧)


お仕事風景です。上映後の劇場の清掃。ゴミが落ちていないかを確認、ほうきで床を掃きます。シートのよごれもひとつひとつ確認します。おおつかがお邪魔した日は、ひとつのシアターを大野さん一人で担当されていました。なんと手際のよいことでしょう。


どんどんお仕事が進みます。
「働く姿」っていうのに誇りすら感じます。


そして次のお仕事へ。
上映開始後の劇場の状況をチェックする仕事だそうです。照明の点灯、消灯の確認、順調に上映が始まっているか、などをチェックするのだそうです。
そうか~。私たちが観ている映画ってそうやってもらっていたのかぁ。


若林副支配人
:安心して仕事を任せられています。上映する映画がお子様向けのものなどは掃除の仕事量も増えるのですが、他のスタッフと協力してテキパキ仕事してくれます。本当に助かっています。


おおつか
:大野さんを採用したポイントは?
若林副支配人:挨拶やまじめさは勿論ですが、決め手は他のスタッフとの関わりです。実習を重ねる内、スタッフ達とどんどん仲良くなっていき、やれると思いました。
おおつか:仕事は誰がどのように教えたのですか。
若林副支配人:リーダーと呼ばれるスタッフを中心に行いました。障害者雇用のノウハウは持っていなかったですが、会社の方針であることも十分に理解した上で、丁寧に指導してくれました。


そうこうするうちに大野さんは次の仕事へ。
上映後、お帰りになるお客様からポップコーンやドリンクのカップ、ホルダーを回収する仕事です。


仕事が終わると無線マイクで報告します。
文句なくかっこいいです。


「ありがとうございました!」と笑顔で対応しながら、テキパキと仕事が進みます。


お客様からドリンクホルダーを回収しながら、同時に、カップ、ホルダー、ゴミ、飲み残しと分別もします。なんだか感動してしまう。


大野さん、何か紙を持っています。見せていただきました。その日の上映スケジュールが記載されたものだそうです。全スタッフがこれを持っています。そしてこれを見ながら仕事を進めます。


大野さんにもインタビューします。
おおつか:どうしてTOHOシネマズで働こうと思ったのですか。
大野さん:芸能関係の仕事がしたかったので、先生に相談したら実習を紹介してもらえました。
おおつか:ぴったりのお仕事ですね。
大野さん:AKB48とか嵐とかが好きなので、すごくうれしいです。


本部部門で障害者採用を担当している、塚原さん(写真㊧)、塩崎さん(写真㊨)にもお話しをうかがいました。塚原さんは、ご自身も視覚障害者であり、TOHOシネマズの障害者雇用一号でした。


おおつか
:1人目の障害者雇用ということでどんな気持ちでしたか。
塚原さん:色んな意味で責任が重いなと思ったのは事実です。私は私であって全障害者を代表したわけではないのですが、私の行動がTOHOシネマズの障害者雇用に影響を与えるのは事実ですから。
おおつか:具体的には?
塚原さん:がんばって結果を出すのはもちろんですし、できないこともあります。それが、障害によるものかどうかというのは誤解を与えないように気をつかいました。気負って頑張りすぎても逆効果にもなりますし。


塩崎さん
:僕にとって、障害者と一緒に働くというのは、初めての経験でしたので、わからないことだらけでした。本当は事前に勉強すべきなのですが、直接、塚原から色々教えてもらいました。「これはOK」とか「こういうときはこうするんだ」とか(笑)。
おおつか:それでどうなりましたか?
塩崎さん:まだまだ配慮に欠けていることも沢山あって、塚原に迷惑をかけていると思いますが(笑)、今感じているのは、障害のある塚原と一緒に仕事をしているのではなく、部下の塚原と一緒に仕事をしている、ということです。


おおつか
:ずばりおたずねします。なぜ特例子会社の設立という道を選択しなかったのですか?
塩崎さん:TOHOシネマズの企業としての基本理念は「GOOD MEMORIES」です。この基本理念をノーマライゼーションに投影させると、障害のあるなしに関係なく映画館で勤務していただく方が基本理念に適っている、という結果に至りました。映画館に勤務するということは、映画という商品を支える裏方の役目です。障害者が映画館で勤務すれば、特例子会社という裏方をわざわざ作る必要もないわけで(笑)。
おおつか:すばらしいです!


塩崎さん
:なので、当社で採用した障害者は、映画館のスタッフとして勤務していただきます。勤務していただくということは、当たり前のことですが、障害者も「戦力として」採用しています。
おおつか:とはいえ、不特定多数のお客様が来館されます。お客様にたずねられたときの対応は心配ありませんでしたか?
塚原さん:障害があることがお客様にもわかるよう障害者スタッフ用のネームプレートを用意しました。劇場で勤務することの不安を取り除く上では効果的だったと思います。ただ、ほとんどのケースですが、お客様にご迷惑をおかけすることもなく、このネームプレート自体が不要なスタッフも大勢います。

~おおつかのひとりごと~

シネコン業界のユニクロと呼ばせていただきます。1劇場1人以上の障害者雇用を支える本部と現場のスタッフ。
成功事例には共通点があるとおおつかは思います。正しいことを正しく進めるという会社の考え方、そして会社の方針を正しく受け止める現場スタッフ。これからは、映画を見に行ったとき、おもわずきょろきょろ見回してしまいたくなるおおつかなのでした(笑)。

訪問先データ

本社:TOHOシネマズ株式会社
100-8421 東京都千代田区有楽町1-2-2 東宝日比谷ビル5F
03-5512-1234(代表)
http://www.tohocinemas.co.jp/index.html

訪問先:TOHOシネマズ西新井
東京都足立区西新井栄町一丁目20番1号アリオ西新井4F
従業員数:約3800名(2012年7月1日現在/パート・アルバイト含む)
障がい者雇用数:73名
http://hlo.tohotheater.jp/net/schedule/040/TNPI2000J01.do

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