ファッションに関心のある大学生の超人気セレクトショップ「ナノ・ユニバース」。
全国に展開するショップのバックヤードでは、知的障がい、精神障がいのスタッフたちが活躍しています。
現在の障がい者雇用に至るまでどんな経緯があったのか、どんな成果があったのか。
根ほり葉ほりお聞きいたしました。
こちらが、障がい者雇用を進めた田中さん。
おおつか:はじめて障がい者を採用したのはいつですか?
田中さん:2006年です。身体障がいの方を本部のMDアシスタント業務で1名。あいにく3ヵ月で退職となりました。
おおつか:どんな基準で採用されたのですか?
田中さん:その方のみの応募でしたので、基準なんて全くわかりません。普通にコミュニケーションできる人なら、という程度の理由で採用しました。うまくいくわけないですよね。
おおつか:それは大変でした。その次は?
田中さん:2007年です。本部での採用は難しいと判断し、千葉の商品管理部で勤務して頂ける方を銚子ハローワーク主催の合同面接会で出会った身体障がい者と知的障がい者、計2名を採用しました。けれども1人は8カ月足らずで退職してしまいました。
おおつか:では、そのあとは?
田中さん:そのあともう1人採用しましたが、試用期間で退職してしまい、1人しか残っていません。
おおつか:まあ。
田中さん:現場の部長にも苦労をかけました。新たに障がい者を受け入れるのは、しばらく待ってほしいと言われてしまいました。
おおつか:それで店舗での採用に?
田中さん:はい。店舗しかほかはありませんので。
でもやはり想像がつかないのです。そうこうするうち、当時のハローワークの雇用指導官から就労支援機関があると言われました。障がい者の就労をサポートしてくれる第三者機関だと、そのとき初めて知らされました。
おおつか:支援機関と連携して採用したのはいつごろでしょう?
田中さん:2011年が初めてです。実習をやってから採用するか決めてはどうかとのご提案があり、実習をしてから採用しました。
おおつか:障がい者スタッフの業務内容を教えてください。
田中さん:現在雇用している12名のうち1名は、さきほどの銚子ハローワーク主催の合同面接会で出会った方で現在も千葉の商品管理部に所属しております。残りの11名の障がい者は、各店舗のバックヤードで商品管理の業務に従事しています。店舗に納品された商品を検品して、たたみ直し、もういちどストック用の袋に入れます。商品名、品番、サイズなどを記入したガムテープをインデックスとして貼りつける作業も行います。
渋谷の店舗で商品管理の業務を行うAさん。仕事がとても早い。
高次脳機能障がいがあるということで、仕事中はこまめにメモを取り、漏れや抜けがないよう工夫しているそう。
同じく渋谷店で働くBさん
知的障がいがある。
機会を見つけては声かけをするなど、フォローもきめ細やか。
横浜店で働く影山さん
笑顔が素敵
田中さん:採用するたび、ジョブコーチも依頼しました。ジョブコーチからは指示の出し方のポイントを教わりました。仕事を円滑に進めるためのアドバイスをもらえたのでとても助かりました。おおつか:障がい者スタッフへの指示や指導はどのように?
田中さん:直接の指導は店長をはじめとする店舗スタッフがしています。私は全体のマネジメントです。ビジネスマナーなど、働く上で必要なことなどの研修も私(田中さん)も同席し、本社担当スタッフが行っています。
田中さん:支援機関を交えて、定期的に本人と店長、私(田中さん)とで面談をやっています。
おおつか:どんなことを話すのですか?
田中さん:現在の体調、仕事の内容、不安なことがあれば聞きます。今後やりたい仕事や目標も聞いています。
おおつか:なるほど
田中さん:支援機関の担当の方に同席してもらうことで、会社として言いにくいことも客観的、専門的見地から伝えてもらえ、本当に助かっています。
おおつか:支援機関の存在を知らない企業も多いですよ。
田中さん:もったいないですね!ただ、就労支援機関を利用するにしても支援機関とご本人の信頼関係があってこそだということも利用してみてわかったことです。
おおつか:その通りですね。関西圏の店舗でも障がい者雇用が始まっているとか。
田中さん:はい。東京のやり方で関西でも雇用が始まりました。同じく支援機関のサポートを受けていますよ。
おおつか:障がい者雇用をやってきてよかったことは?
田中さん:商品管理がスムーズにできてくると仕事が効率よくすすめられるようになったことはもちろんです。そして、現場のスタッフたちのチームワークがすごく良くなり、一人ひとりがやさしくなった。もともとやさしいスタッフたちですが、ここまでやってくれるとはというレベルで障がい者スタッフをサポートするんです。障がい者スタッフが仕事がしやすいようにいろいろ工夫してくれる店舗もあります。
おおつか:すばらしいですね!
田中さん:ウチのスタッフたちってこんなにすばらしい人材だったと、今更ながら感嘆したくらいです。
おおつか:今後のビジョンを教えてください。
田中さん:いたずらに数だけを負う障がい者雇用はやりません。やりがいを感じ、長く障がい者に働いてもらいたいと思っています。その結果として一人でも多くの障がい者スタッフが活躍できるようになっていればいいなと思います。店舗での障がい者雇用を展開し、社内理解に努めることで、今後の障がい者雇用の促進に繋がればと思っております。
~おおつかのひとりごと~
支援機関との連携は、FVPでもよくご提案しているが、ナノ・ユニバースさんは、なぜにそんなにうまくいったのか。
田中さんの存在は大きいと感じる。一言で言うとしなやかでクリエイティブなのだ。
現場へのサポートも余念がない。社内で自身がどのような立ち位置だと障がい者雇用がうまくいくのかをよくよく理解されて、憎まれ役もお母さん役も時と場合によって使い分ける。お見事の一言につきる。それにしても、支援機関があるなしによって、これほどまでに障がい者雇用の成果が違ったという事例、たくさんの企業の方に知ってほしい。そして、もっともっと支援機関を活用してほしいと思う。
訪問先データ
会社名:株式会社ナノ・ユニバース
障害者:知的、身体、精神障がい12名
所在地:東京都渋谷区神南1-19-14
ホームページ :http://www.nanouniverse.jp/