ANAスカイビルサービス株式会社は、ANAのグループ企業として、建物施設や設備の保守管理、ビルの清掃、保安警備、空港ラウンジや企業受付の業務など幅広い事業を展開している企業です。
今回は、東京・大田区のANA訓練センターにおうかがいしました。ここでは、運航乗務員、客室乗務員、整備士の訓練を行っています。訓練センターを訪問したそのワケは、障がい者スタッフが清掃の仕事で活躍しているからです。
訓練センターは、羽田空港に近い大田区東糀谷に位置しており、緊急時の対応を訓練するため実物の機体を模した「モックアップ」など、様々な施設があります。
建物正面玄関
小野さん。入り口受付のコーナーをモップで清掃中です。
同じフロア、ロビー階段の手すりを清掃中の越智さん。
入り口は多くの人が出入りします。
ただ清掃技術があればいいという事ではなく、
「作業の手をちょっと止める」「通行する人が通りやすいよう通路をあける」など、通る人の動線を遮らないような配慮が求められます。
トイレを清掃中の椎林さん。
勤続10年のベテランです。
3フロア分の清掃作業をすべて一人で担当します。
山崎さんです。
お伺いした時間は液体せっけんの補充作業中。
テキパキ作業が進みます。
久保井さん。
今年入社だそうです。
風除室のモップ掛け作業中。規則的なリズムで作業が進みます。
資機材(道具)。すみっこにきちんと置かれています。
プロの仕事だなあと感動。
高梨さん。
水石鹸の希釈充填作業中です。
久保井さんの指導も担当したそうです。
障がい者スタッフの所属するクリーンサービス課の責任者(課長)の高橋さんです。
総勢80名のスタッフを擁するクリーンサービス課のウェルファグループとして、11名の障がい者スタッフが所属しています。
障がい者スタッフを束ねる役割の石山さん。
高橋さん:最近彼らと一緒に休憩時間に散歩を始めたんです。メタボ対策が必要なスタッフもいましてね。「もっと運動しなきゃ」といったら、「課長こそ」と言われまして(笑)
休憩時間中はお互いコミュニケーションを取るようにしています。時には冗談を交えながら。でも仕事時間中は表情が変わります。安心して任せています。
おおつか:プロの仕事だなあと見ていて感動しました。何か特別な指導をしていらっしゃるのでしょうか?
石山さん:清掃のプロになってくれるよう教育をしますが、特別なことはやっていません。障がい者スタッフ向けの清掃のテキストを使いますが、それもすぐに要らなくなります。
3ヶ月もあれば十分一人で仕事ができるようになります。
おおつか:たった3ヶ月ですか?それはすごいですね。
もともと採用基準が厳しいのですか?
石山さん:いえいえ、そんなことはありません。
仕事の能力については、採用時点では重視していないですよ。
実習は2週間くらいやりますが、そのときに評価するのは、体力、指示理解、協調性です。この3つがあれば、トレーニングしているうちにできるようになりますよ。
おおつか:業務スキルはあとから付いてくるんですね。
石山さん:そうです。経験がないからできなかっただけです。
あっという間にできるようになりますよ。
高橋さん:今年2年間であと4名増員し15名体制にする計画です。ANAスカイビルサービス株式会社の経営資源は人財であり、戦力、労働力として期待しての採用です。
おおつか:「労働力として」ですね。
高橋さん:ビルメンテナンス業界は人材の確保が業界全体の課題です。障がい者雇用に関してANAグループでは「3万6千人のスタート」という行動規範を掲げ推進しています。グループ全体でダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。私たちは、その実践をもっともっとやっていきたいと思っています。
~おおつかのひとりごと~
ANAスカイビルサービスで働くスタッフのユニフォームは障がいスタッフも健常スタッフも同じ。誰に障がいがあるのかは外見からはわかりません。「拡大研修会」と名付けられた年1回の全体研修では、すべてのスタッフに会社の方針、仕事の心構え、清掃技術などの教育が行われるのだそうです。「同じ働く仲間として」の実践が随所に見られる現場でした。
ANAグループでは、グループの37社全体で障がい者雇用に関わる行動規範が作成され、その行動規範に基づいて障がい者雇用が進められているとうかがいました。「3万6千人のスタート」と名付けられたその行動規範は、グループ内企業の全スタッフに周知され、携帯用のカードも配布されています。方針と実践に一貫性があり矛盾がない企業で働く従業員は迷いがなく強い。そしてそんな従業員の働く企業はしなやかで強いおおつかの中では、確信に変わりつつあります。
訪問先データ
会社名:ANAスカイビルサービス株式会社
所在地:東京都大田区羽田空港1-6-6 第一綜合ビル2階
従業員数:1756人(うち障がい者数:21人)
http://www.sbs.ana-g.com/