障がい者雇用事例/おおつかがゆく!

彼らは戦力だと心の底から感じています。

公立大学法人奈良県立医科大学

おおつか:ご自身の希望で障害者雇用の仕事を?
岡山さん:違います。もともと私は保育士で、病院内の保育園の園長として採用されました。2014年のことです。ところがその院内保育園が民営化され、「障害者雇用推進係を発足するので頑張ってみないか」ということでお話を頂きました。
おおつか:そうだったんですね!

おおつか:当時のことを教えてください。
岡山さん:スタートから1年半はすべてがうまくいきませんでした。コミュニケーションが全く取れない。何か言っても反発される。暴言を返されることも多々ありました。
おおつか:そうなんですか。それはご苦労されましたね。
岡山さん:当時の私は、障害があるから優しくしなければならないなんて勘違いしていました。障害者としか見ていなかったのかな。人間としてしっかりと関わってもらえていないということを見抜かれてたんでしょうね。

おおつか:見抜かれていたと?
岡山さん:私には、障害者の皆さんを担当することは力不足で辞めたほうがいいんじゃないか、支援者失格だとかなり落ち込みました。そして、とことん悩んでハタと気づきました。障害者である前に一人の人間であること。心と心で正直に関わっていけばいいのではないかと。ダメなものはダメ、いいものはいいと素直に伝えようと。
おおつか:そうしたら?
岡山さん:はい。しっかりと仕事に取り組んでくれるようになり、私に対して心を開き、私を支えてくれるようになりました。
この経験から「任せる」「認める」「感謝する」の気持ちはいつも大切にしています。
おおつか:そんなことがあったとは全く想像できません。

おおつか:現在の障害者雇用について教えてください。
岡山さん:当院では、障害のある職員を係員と呼んでいます。知的、精神、発達障害のある係員は現在41名。うち知的障害者が一番多くて31名です。23の部門で看護助手さんと一緒に病棟などで仕事をしています。精神障害のある係員はPC関係の業務や軽作業を担当、発達障害のある係員は検体ブロックと呼ばれる組織標本づくりの業務などを担当しています。
おおつか:みなさん、普通に、医療現場にいらっしゃるということですか?
岡山さん:はい。病院ですから当然医療現場で働いてもらっています。

では、その現場を拝見します。

最初にうかがったのは5階の口腔外科。

診療台の清掃業務の真っ最中でした。
おおつかには詳しい作業手順はよくわかりませんが(笑)

ベッドマットレス

防水シート切りの仕事(特別支援学校卒業生等の実習生指導)

病棟のみならず、ICU、高度救急救命センター、放射線科などにも配属されているそうです。

こちらはNICU(新生児集中治療センター)の新生児の保育器の洗浄の仕事。

PC関係の業務
精神障害のある係員の方が主に担当されています。

検体ブロック(検体プレート)を作る仕事
発達障害のある係員の方が担当されています。


障害のあるスタッフのみなさんが全員集合してくださいました。さわやかな笑顔です。

おおつか:今更ながらですが、岡山さんの目の行き届かないところばかりですね(笑)
岡山さん:はいそうです!現場では、師長さん方にお任せしていますので。
出勤簿に打刻したら、それぞれの席で朝礼をして業務に取り掛かります。看護師さん、看護助手さんたちに仕事の差配、教育はお願いしているんです。実習中に、ドアノックとか失礼しますだとか、接遇教育は特にしっかりやってますけど(笑)
おおつか:係員のみなさん、困ったときはどうされるんですか?
岡山さん:みんな携帯を持ってます。困ったときは携帯に連絡を入れるように指示しています。

おおつか:医療現場には障害のある人が担える仕事はたくさんあると思います。でも、多くの病院が障害者雇用を進められなくて苦労されている。「私たちは命を預かる仕事をしている。万が一のことがあっては取り返しがつかないことになる」という心のバリアが取り除けない。そのバリアはどうやって乗り越えたんですか?

岡山さん:やっぱり仕事がたくさんあるのは看護部です。ですから看護部の高橋看護部長のご協力は大きかったです。
おおつか:簡単に協力してくれたんですか?
岡山さん:ええ(笑)。実は、私が一時的に総務課所属だったとき、高橋看護部長は当時は県立医大医師派遣センターにおられ、机を並べて仕事をしていたんです。二人はなんとなく心が通じ合うような感覚がありましてね。そのあと私は障害者雇用の担当になって。さっそく高橋看護部長のところにお願いに行ったんです。そうしたら、快く協力してくださって。
おおつか:岡山さんの熱心な院内営業が功を奏したんですね(笑)
岡山さん:きっかけは作りましたが、それはただのきっかけです。係員たちがきちんと実績を上げてくれることが最大の営業です。

看護部長の高橋さん、岡山さん、看護副部長の辻本さん

おおつか:院内の職員の皆さんたちの反発はなかったんでしょうか?(ついつい不安になって聞いてしまうおおつか)
高橋さん:反発どころか、感謝していると思います。自分たちが本来すべき看護ケアや業務に集中できるんですから。
辻本さん:医療事故やトラブルが起こると思っちゃうんでしょうかねえ?心配ないです。
係員のみなさん、本当に一生懸命で頭が下がります。

おおつか:今後のビジョンを教えてください。
岡山さん:障害のない一般の看護助手と同じ仕事内容と処遇に転換する係員を少しずつ増やしたい。彼ら一人一人、自立した社会人として生きていけるように。結婚したり家庭を持ったりすることも応援したいです。

~おおつかのひとりごと~

帰り際にうかがった「患者様の声ポスト」に届いた一通のお話を。
「通院時病院の入口で、係員(障害のあるスタッフ)から『おはようございます』と声を掛けられた。彼らが元気よく頑張っている姿に触れて、自分も治療を頑張ろうと思った」という内容だったそう。看護部長の高橋さん。職員への苦情も多い中で、こんなにうれしいメッセージをいただいた。彼らと働けて、彼らが働いてくれて本当に良かった」としみじみした表情で教えてくださいました。
百聞は一見に如かずである。多くの病院関係者の方々は、奈良医科大学病院に行くことをおすすめします。インクルーシブな障害者雇用って、障害のある人も育つし、周りもイキイキ元気にする。あらためてそんな気持ちを強く持ったひと時でした。

訪問先データ

公立大学法人奈良県立医科大学
奈良県橿原市四条町840番地
障害者雇用人数:41人
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