障がい者雇用事例/おおつかがゆく!

複雑な客室清掃業務も、分解すれば障害者スタッフが活躍できます

リゾートトラスト株式会社

会員制リゾートホテル、ゴルフ場、有料老人ホームなどの施設を国内外で開発・運営するリゾートトラスト(株)。
今回訪ねた現場は東京・新宿にある直営のシティホテル、サンメンバーズです。このホテルの清掃業務で、障害のあるスタッフたちが活躍しています。

障害者雇用の責任者、北沢健さん、清掃業務の責任者、鳥居正隆さんにお話を伺いました。

おおつか:リゾートトラストさんがホテルの清掃を行っていることは、あまり知られていないですよね。

北沢さん:そうなんです(笑)。スタートが2009年で、かれこれ10年近くやっているんですよ。

おおつか:その経緯を教えていただけますか?

北沢さん:当時、新宿エリアにどんどんホテルが建設されていました。人手不足が深刻化し、客室清掃を障害のあるスタッフでやれないかという打診が入りました。

おおつか:なるほど。

北沢さん:客室清掃は、マルチタスクで、段取りを行う力や接遇面のスキルが要求される業務です。そのままの状態ではなかなか簡単ではないので、工夫が必要です。

おおつか:人手不足の課題が解決できれば、会社にとってもありがたい話ですよね。どのように工夫されたのですか?

北沢さん:業務内容をどんどんシングルタスク化していきました。「1人が3部屋やるのを3人で9部屋やれば、同じ生産性」という考え方で。マネジメントスタッフを配置して、そのスタッフが業務を分解し、業務の差配と品質、スピードを管理するようにしています。

おおつか:鳥居さんが、そのマネジメントスタッフの一人ということですね。

鳥居さん:はい、そうです。チェックアウトが終わった部屋から清掃に入るのですが、チェックアウトの状況は刻々変わりますので、われわれがその状況を把握して、障害のあるスタッフに清掃に入る部屋を指示します。

おおつか:どのように指示をするのでしょうか。詳しく教えていただけますか?

鳥居さん:ベッドメイク担当、バス・トイレ担当、掃除機と拭き上げ担当と、各作業の担当者にそれぞれ指示を出します。シングルかツインか、連泊かその日のチェックアウトか、エコ清掃(連泊時リネン類の交換を必要としない)かなどによって清掃方法は変わりますので、その指示も出していきます。

おおつか:とても複雑ですよね。

鳥居さん:おっしゃるとおりです。特にベッドメイクは当ホテルの客室清掃において重要な部分で、ベッドの種類が4種類あって複雑な作業なので、指示が確実にできるように「ベッドメイクチェック表」というカードを使っています。それによって私たちも業務管理がしやすいですし、口頭での指示理解が苦手なスタッフや時間管理の苦手な障害のあるスタッフにも効果的です。

こんな風に業務の指示が出されます。

「ベッドメイクチェック表」
持ち歩きしやすい名刺サイズ。
部屋番号、客室タイプ、エコ清掃の有無、時間を記入する欄もあります。

ベッドメイクチェック表を渡された障害者スタッフは、指示に基づいて清掃業務を行います。
ベッドメイクの業務です。

力仕事ですが、テキパキと業務が進んでいきます。

朝食会場の掃除機掛けです。

 

パブリックスペースの清掃も担当します。
エントランス階段部分の清掃中の様子です。

清掃後の客室をチェックしていきます。 

こちらが客室チェックの際に使うチェックシート

客室清掃のマニュアルです。

作業中こまったときに確認できるよう、マニュアル類はたくさん用意されています。
みなさん業務をしっかりマスターされており、あまり確認することはないとか。

北沢さん:ベッドメイクチェック表に記入された情報を集計しているのですが、障害者スタッフのスキルや体調が視覚化できて、とても有意義です。

鳥居さん:精神障害のあるスタッフの調子が悪そうだと感じたとき、前年の記録を見るとパフォーマンスも同様だったりします。

おおつか:そういうときはどうするんですか?

鳥居さん:担当する部屋数を減らして様子をみたり、パブリック清掃を担当してもらったりして、体調やパフォーマンスの波を小さくしていくんです。

おおつか:客室清掃というのは、最後に清掃の状況をチェックしなければならないですよね。その仕事はどなたがなさるのでしょうか。

北沢さん:もちろんチェックも障害者スタッフで行っています。チェックの得意な障害者スタッフに担当してもらえば解決することです。
現在は、ベッドメイクや客室のバス・トイレ清掃のほか、その他館内清掃も広く担当しています。障害者スタッフの数も5名から17名に増えました。
おおつか:それは素晴らしいです! リゾートトラストのやり方を真似れば、多くのホテルが悩む人材確保の課題も、障害者雇用の課題も同時解決が可能ですね。
北沢さん:そう思います。

おおつか:まず、どこから始めていくといいでしょうか?
北沢さん:「1人で3部屋スタイル」を「3人で9部屋スタイル」に組み替えていくといいと思います。その「3人」はすべて障害者である必要はありません。メンバーの1人に障害のあるスタッフも含まれるというスタイルなら、取り組みやすいと思います。
鳥居さん:客室清掃スタッフは高齢の方が多く、ベッドメイクの業務は腰に負担がかかると言われます。チームで行っていけば、ベッドメイクは体力のある若い障害者スタッフが主に担当することもできます。
おおつか:いいことだらけですね。もっともっと広がっていってほしいです!

 

~おおつかのひとりごと~

サンメンバーズホテルの口コミサイトの評価は、障害のあるスタッフがホテル清掃に加わるようになって、クレンリネスの評価がアップしたそうです。人手不足の解消、障害者雇用の成功、そして顧客満足度の上昇。いいことづくめです。「客室清掃はチーム制で」の流れを業界あげて作り上げていくことの必要性を強く感じました。

訪問先データ

会社名:リゾートトラスト株式会社
本社 :愛知県名古屋市中区東桜2-18-31
従業員数:7,059人(うち障害者数214人)
東京本社:障害者数85人 サポートスタッフ16人
企業情報はこちら

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