サンフロンティア不動産で採用されたのは発達障害のある社員3名。初めてに近い状態での障害者雇用。
しかも一気に3名、3つの部署に1名ずつ。
映画館やショッピングセンターも入居する日比谷シャンテビル。この14階にサンフロンティア不動産の本社はあります。
本社オフィス。
発達障害のある社員の方、他の社員と一緒に働いているのです。
障がい者雇用を進めた人事総務部長の二宮さん。
まさに「頼りがいのある上司」そのものの風格です。
おおつか:採用を検討したときのことを教えていただけますか。
二宮さん:24年の秋ごろでしたね。当時雇用している障がい者はゼロ人でした。従業員数を考えると翌年の4月には3名を雇用する必要が生じる。
おおつか:どんな障害者雇用のイメージをお持ちでしたか?
二宮さん:本社は最寄り駅が有楽町です。通勤ラッシュもありますし、オフィス内のバリアフリー工事も容易にはいかない。若い社員が多く、皆がバリバリ働く環境ですから、必然的に軽度の身体障害の方かなと言うイメージでした。
おおつか:なるほど。
二宮さん:でも、求人をしてもそんな方は、なかなか採用できないですしね。でも採れないではすまない。
おおつか:採れないではすまない?
二宮さん:私たちは「企業は公のもの」と考え、事業を行っています。公器としての社会的責任を果たすという視点に立つと、法律で定められた障害者雇用に向き合わない理由はありません。ですから「採れないではすまない」のです。
おおつか:身体障害者以外の方の採用も検討しようとされました?
二宮さん:やってもらう仕事を工夫すれば、知的障害や精神障害の人でも可能性があるのではないかと思いました。しかし、いざ現実問題として捉えると、課題ばかりが見えてくる。会議に諮ると不安の声も聞こえてくる。そう言う声もよく理解できます。このまま机上の空論を繰り返しても、前に進むことは出来ないなと思いました。
おおつか:それで?
二宮さん:まずはハローワークを介してさまざまな障害のある方を紹介していただきました。視覚障害、聴覚障害、知的障害、精神障害など16名ほどです。そしてその中で、期待したスキルをお持ちの方、わが社の社風にフィットしそうな方に「実習(インターン)」をしていただきました。
おおつか:それが今回採用された3名の方。
二宮さん:そうです。精神障害者の手帳を持っている発達障害の方に実習を依頼し、実際に仕事を体験していただきました。これが実によい効果をもたらしました。社内の空気が「身体障害者じゃなくても大丈夫だ」というムードに変わったのです。
おおつか:職域は?
二宮さん:単なるバックオフィス業務を集めて仕事にすることは避けたかったので、「ど真ん中の仕事」にこだわりました。不動産情報のデータ化や修正業務、取引書類のPDF化やファイリングをはじめ、社員とのやり取りがあり、直接業績に関係する仕事に携わってもらっています。
人事総務部所属のTさんのお仕事の様子のほんの一部をご紹介。データエントリーとチェックの仕事
直接の指導係の林さんです。
おおつか:一緒に働いてみての感想はどうですか?
林さん:最初はうまくやっていけるか不安がありましたが、「まったく問題なし!」でした(笑)。注意した後、「大丈夫か」と心配したこともありましたが、「ハイ」と素直に聞いてくれ、ケロっとしています。仕事は確実で早い。他の社員も気付かなかった書類の誤りを発見してくれたこともあります。お陰さまで助かっています。
同じ部署の山川さん:楽しく一緒に仕事やらせてもらってますよ~。Tさんも楽しそうに仕事をしてくれてうれしいです。
二宮さん:「おはようございます」「お帰りなさい」「お先に失礼します」と明るく、あいさつすること。洗面所を使った後に洗面台を拭くこと。等の決められたルールがあります。ルールは絶対に守ってくれます。他の社員の模範ですね。わが社は、社長より誕生日の社員に対し、“バースデーメッセージカード”が贈られます。そのメッセージが仲間の前で発表された後、当人がスピーチをするのが恒例なのですが、Tさんも誕生日を迎え、社員の前でスピーチをしてくれました。
おおつか:どうでしたか?
二宮さん:スピーチは決して得意でないと思いますが、堂々としたものでした。「今の目標は仕事で周囲に信頼されることだ」と言ってくれました。
おおつか:今後はどんなビジョンを?
二宮さん:採用した3名の障害のある社員たちに、新しい仕事にチャレンジしてもらい、さらに会社に貢献してもらいたい。
経営理念にある「共生の心」を大切にしながら、一緒に成長していきたいと思っています。
~おおつかのひとりごと~
採用のお手伝いをした会社への取材はいつも以上にうれしいものです。担当の二宮さんをはじめとする社員のみなさんが、発達障害のある社員のエピソードや成長についてうれしそうに語ってくださいます。
「正しいことを貫く」「ど真ん中の仕事を」「分け隔てなく接する」
障害者雇用を進める上での王道、正道を踏んでいけるのは全社員で共有する経営理念がベースにあるから。従業員も増えたので、また採用したい。そんなうれしい話も聞けてよかったです(*^_^*)
訪問先データ
サンフロンティア不動産株式会社
東京都千代田区有楽町一丁目2番2号
TEL:03-5521-1301
従業員数:182名(うち障害者3名、発達障害)
障がい者社員の職域:人事総務部、プロパティーマネジメント事業部
http://www.sunfrt.co.jp/