建物総合管理、スポーツ施設管理を展開する株式会社ジェイレック。取材に伺った場所は、ジェイレックが日常清掃を請け負っている東京・江東区内の障害者支援施設「江東区立亀戸福祉園」です。障害者スタッフの丁寧な仕事ぶりが信用につながり、15年もの長期にわたって契約が続いているそうです。
安藤弘之さんです。
取締役の渡邉 さん、指導担当者の柴田さんと一緒に休憩室でのインタビューとなりました。
「どうぞこちらへ」とにこやかな笑顔で迎え入れてくださる。
この施設の清掃業務の委託をうけたときの入社なので、勤続15年になります。
おおつか:入社したころのことを覚えていますか?
安藤さん:いろいろ覚えることが多くて。でもなかなかできなくて、最初の5年は苦しかった。
おおつか:それが5年経つとできるようになったのですか?
安藤さん:まあそういうことです(笑)
渡邉 さん:安藤さんは努力家です。手に軽い障害があるため、最初はモップや雑巾を絞れなかったんですが、家で何回も練習してできるようになったんです。
おおつか:家で練習したんですか!
安藤さん:はい!
おおつか:お仕事時間は?
安藤さん:8時から16時までの勤務です。でもなるべく早く来るようにしています。着いて着替えたらすぐ仕事します。
おおつか:(心の中で「まじめで仕事熱心!」)
柴田さん:安藤さんと2人の清掃スタッフの3人で館内の日常清掃すべてを行います。午前中の仕事は、ごみの分別、エントランスのモップ掛け、トイレ清掃、排水溝清掃などです。お昼休憩の後は、トイレットペーパーの補充、食堂の清掃などです。清掃場所や頻度は日報に細かく書いてありますので、これを自分でチェックして仕事の抜け漏れがないようにしています。
これがその清掃のチェック表。
実にたくさんの種類の仕事。
清掃場所ごとに細かく明示されています。
おおつか:これは安藤さんのために作ったのですか?
柴田さん:いいえ。清掃業務の品質管理を目的に導入しました。新人の清掃員でもピンチヒッターに現場に入った清掃員でも、抜け漏れのないきちんとした仕事ができるようという理由です。そのことで安藤さんも働きやすくなりました。就職前に所属していた支援施設が提供したトイレ便器清掃のマニュアルがありましたが、それだけでは不十分でしたので。
おおつか:柴田さんはどんな役割を?
柴田さん:だいたい週1回くらいの頻度で訪問します。滞った仕事がないか確認を行い、粗大ごみの処理などスポット的に発生する作業については安藤さんと一緒に作業を行います。安藤さん自身からも困っていることがないかヒアリングします。お客様である障害者支援施設の方にも状況を確認します。
おおつか:柴田さんは障害のある方と仕事をした経験はあったのですか?
柴田さん:はい。別の現場で一緒に働いた経験はありました。その前はプールの指導員で、プールにはたくさんの障害のある子供たちが来ていましたので、特に違和感はなかったです。
おおつか:プールの指導員?
渡邉さん:当社は、プールなどのスポーツ施設の運営も行っていますので、私(渡邉さん)も柴田も、水泳の指導も清掃もできるんです(笑)
おおつか:なるほど~(笑)
渡邉さん:柴田も私も障害者について抵抗はありませんでしたが、スポーツと仕事は違いますしね。正直申し上げると本当に仕事できるのだろうかという気持ちがどこかにありました。
おおつか:採用してみたらどうでしたか?
渡邉さん:あはは。できましたよ。まじめできちんとやってくれる。
午後の清掃業務を見せていただきました。
仕事の様子を拝見します。
午後の食堂のモップ掛け。
広い食堂の床がきれいに光っています。
食堂の流し台。ここはすでに清掃済み。水垢ひとつありません。
渡邉さん:ここまできれいにできるって、簡単ではないのですよ。本当に丁寧にやってくれています。
ゴミの分別と片付けの仕事です。
使ったモップを洗って絞る作業。入社当初できなくて苦労したとは思えません。
柴田さん:施設の利用者(障害者)からとても人気があるんですよ。「一緒に遊ぼう」と声を掛けられるようです。
安藤さん:「かくれんぼしよう」「相撲を取ろう」と声をかけられるけど、仕事中はダメだっていうの。危ないしね。だから休憩時間にならいいよっていうの。でもかくれんぼは休憩時間がなくなっちゃうから相撲ならいいよといって、相撲の相手をしてあげてる。
渡邉さん:施設の利用者から声をかけられることはとてもうれしいことですが、清掃中の床は滑りやすく、モップなどの道具も危険があります。万が一でも転倒事故になったらとても大変だから、我々も神経質になります。
渡邉さん:以前のことです。仕事中に利用者が声をかけてきたとき、安藤さんが今は危ないから「今はダメ!」と強い口調で言ったようです。その声の大きさは場にそぐわなかったのだと思います。声が事務室にまで聞こえたらしく、支援施設から注意を受けたことがあります。
おおつか:それでどうされたんですか?
渡邉さん:臨機応変な行動をとるのが苦手という特性を理解し、適切な行動がとれるように声掛けしました。
おおつか:「障害者には安全に配慮しなければならない仕事は無理」とは思わなかったんですね。どんな声掛けですか?
渡邉さん:語弊がある言い方で恐縮ですが、「仕事中は利用者から逃げろ」と伝えました。利用者の近くで仕事をしなければ、結果として安藤さんも利用者の安全に配慮した行動がとれるからです。
おおつか:なるほど!
おおつか:15年働いてきた安藤さんをどのように思いますか?
渡邉さん:なるべく長く働いてもらいたい。安藤さん自身もここで定年まで働きたいと言ってくれています。こんなにうれしいことはないです。会社としても働き続けてもらうための努力は惜しまないつもりです。
おおつか:これから清掃現場に障害者を雇用しようとする企業に一言お願いします。
渡邉さん:心配は必要ないと思いますが、まずは現場近くの支援機関に相談されるといいと思います。また、イメージが持てないなら障害者技能競技大会(アビリンピック)の大会を見に行くといいですよ。技術のレベルも年々進化しているし。「ああこれなら大丈夫だ」と思ってもらえると思います。安藤さんの場合、障害の特性と言われる「こだわり」が、仕事の上では「まじめさ」「きちんとさ」になる。一般のパートではなかなか真似できない。こんな風に考えていけばもっともっと活躍してもらえる。大げさですが、企業はもっと障害者の力を活用できると思いますよ。
~おおつかのひとりごと~
「仕事は信用が第一。信用を得るためには努力しなければならないとお父さんから教わった。」という安藤さん。手に障害があるせいで、入社直後はモップが上手に絞れなかった。家でバケツに雑巾を入れ、何回も練習したおかげで今は何の苦労もなく絞れるようになったのだそう。本人の努力と周囲の社員の工夫によって、3人現場の1ポジションをしっかりと担ってくれていることを実感した。そして「定年まで働きたい」という安藤さんの言葉に、15年間に培った自信や誇りを感じることができたひと時だった。
訪問先データ
会社名:株式会社ジェイレック
所在地:東京都練馬区関町南一丁目12番4号
従業員数:120名 うち障害者4名
URL: http://www.j-rec1986.co.jp/